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「あ、あの・・・血抜きって?」
「血抜きってのは、家畜を屠殺した後に逆さ吊りにして血を抜くことを言う。そうすると後で食う時に血生臭さがなくなるってわけだ」
「え? じゃ・・・じゃあ、さっき殺された人は・・・」
「ああ、あいつらの食料になったってことだ」
人間が食料、常識では考えられないことだが、それを男性はごく普通に当たり前のことのように彼女に告げていた。
「そ、そんな・・・酷い・・・」
「酷い? それはおかしいだろ」
人を殺して食料とする。それをおかしいと感じた彼女だったが、その感覚自体を男性は間髪入れずに否定した。
「人間だって牛や豚や鳥を食う。その時と同じような処置をあいつらは人間でしているだけだ。あの家畜小屋だって人間が家畜を飼うのと大差ない。そんな扱いを人間がされている光景が目の前にあるってだけだ」
目の前に広がる光景は人間が今まで家畜に行ってきたことそのものだと男性は言う。それをそっくりそのまま自分達人間に返って来ただけだと、彼はなにもおかしいことはないと言うかのように平然と言葉にしていた。
「じゃ、じゃあ・・・私も・・・」
「ああなるかもな。捕まれば、だが」
家畜小屋の支配者に捕まれば同じ目に遭う可能性は十分ある。それはより一層彼女の心に恐怖心を抱かせる。
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