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カレンダーは永遠に同じ日付を示したままだ。
それを破り捨てたところで日は変わらないし、食べてしまったところで何も変わらない。
物を食べたという指令が送られはするものの内臓は働かない。
ただ、不快な紙の舌触りだけが残る。
時間にしたらどれくらいだろうか。
もう長いこと他人の家のかび臭いソファに腰かけている。
しかし、おかしなことに空腹感も、便意も、睡魔も襲ってはこない。
人間の体内時計というものをどれほど信じられるかはわからないが、もう数年はこうしているような気がするのに。
時化た灰色のリビングルームには音はない。
この世界には俺以外には誰も存在しないからだ。
外へ出ることも誰かに助けを呼ぶこともできない。
そこまで丁寧に作られていないから。
選択肢を間違えたんだとしたら、最初っから最後まで全部が全部だと思う。
この悪趣味なプログラムを組んだヤツが俺たちに何をさせたかったのか、いまではもうわからないし知ろうとも思わない。
ゲームの終わりを告げる掛け時計は一向に鳴らない。
これから俺自身何をすればよいかわからない。
「にわ」
まただ。また声がした。
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