第6話 Deadline

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第6話 Deadline

「ギリギリでしたね。 これ以上の放置は命の危険がありました。 極度に脱水症状を起こしています。 このままだと心臓や脳に負担がかかり過ぎる…」 寿哉は医師から説明を受けていた。 「拒食症はまず、 物を口にする事からゆっくり始めていきませんと。 それにはメンタルのケアと同時進行がベストです」 医師に勧められたのは「心療内科」だった。 そしてメンタル・内科クリニック「Espoir~エスポワール~」 を勧められた。 …メンタルか。由依、ゴメンな。 俺、気づかないところでお前を傷つけ、 追い詰めてたのかな… 薬でコンコンと眠り続ける彼女を見つめながら、 寿哉は心の中で話しかける。 寿哉は由依が元気を取り戻してくれるなら、 何でもするつもりだった。 何ができなくても、 何ができてもそんな事は無関係だ。 由依がそのままの自然体でいてくれたら、 それだけで良かった。 勧められた「エスポワール」は六本木にあり、 土曜日も午前中はやっているらしい。 寿哉は早速予約を入れた。 …寿哉はね、 小さな頃からお人形みたいなかわいい子が好みだったのよ。 だから、寿哉は私を選んだの… アメリアは得意そうに由依に話す。 「!」 由依は全てが符号して絶句した。 …寿哉は幼い時から 「ピグマリオンコンプレックス」だったんだ… 「由依?」 寿哉はうなされ始めた彼女を、 心配そうに覗き込む。 そして点滴をしていない彼女の右手を、 そっと両手で包み込んだ。 「こんなに…痩せちまって…」 元々細い体が、 枯れ木のように弱々しい…。 血の気を失ってパサパサな肌…。 思わず寿哉は涙が込み上げてくる。 「お前、一体何と戦ってるんだよ?」 夢の中まで助けにいけない自分が、 歯痒くもどかしかった。
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