第8話 その愛②

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第8話 その愛②

「俺がアメリアを見ていたのは…その…由依に似てるから…」 と由依を抱きしめつつ、寿哉は少し顔を赤くする。 そんな…じゃぁ、私が嫉妬していたのは… 由依は自分が非常に滑稽に思えた。 寿哉は更に続ける。 「俺が幼稚園の時に書いた好きなタイプは お人形みたいに可愛い子…あれ、 お前よくそう言われてたろ? …だから…だ」 と更に赤くなって横を向いた。 「愛には形がありません。 ですから行き過ぎれば溢れ、暴走します。 それが、嫉妬・狂気等と呼ばれるものです。 …それは誰の心にも潜む闇。もちろん私にも。 愛とはお互いを信頼し相手の自由を認める心。 私はそう思います」 熱い抱擁を交わす二人に、光輝はそう語りかけた。 窓から差し込む光を受け、彼の髪の金色のメッシュが光輝く。 まるで光に包まれた天使のように見えた。 それから由依は、驚く程の早さで健康を取り戻していった。 「これでアメリアも寂しくないわね」 由依はそう言って寿哉に微笑む。 危うく娘を失うところだった… 肝を冷やした由依の父親に、 由依は甘えておねだりし 男子のSDドールを買って貰ったのだ。 名前をウィリアム(勇敢な守護者)と名付け、 今、彼はアメリアに寄り添うようにして並んでいる。 「寿哉に似てるわよね、ウィリアム」 と由依は微笑んだ。 寿哉は照れたように笑った。 それから二人は揃って部屋を出た。 これから某アミューズメント施設へいくのだ。 「?!」 寿哉はふと、大学生くらいの男子三人組がすれ違いざまに 由依を振り返って見ていった事に気付く。 …不意に言いようの無い不安が過った。 「由依、やっぱり今日は部屋でまったりしようぜ!」 彼はそう言って繋いでいた手に力を込め、 元来た道を引き返し始めた。 …由依は俺だけのものだ… 寿哉の胸に、今…闇色の炎が燃え上がった…。 完
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