第1話 きっかけ

3/3
前へ
/14ページ
次へ
「寿哉、どっちの子が良い?」 由依は甘えたように尋ねる。 …可愛いな、由依… と思いつつ、 「自分で選べよ」 と優しく彼は促した。 「もう!どっちも可愛くて。 決め兼ねてるから決めて欲しいのに!」 と由依は頬を膨らませた。 勿論、本気で怒ってなど居ない。 「仕方無いな…」 と彼は右手で彼女に頭を撫で、 二体の人形を見比べた。 正直、それほど人形に興味は無いのだが… プラチナブロンドの方の人形に釘づけになった! …由依に、似ている!… (…寿哉?) 彼がプラチナブロンドの子を真剣な眼差しで見る事に、 生まれて初めて味わう不快なモヤモヤ感が胸に芽生えた。 「この子にしない?」 彼は笑顔で由依に話しかけた。 人形は大切にラッピングして貰い、 可愛いピンク色のレース模様の 紙袋に入れて寿哉は大切に受け取り肩にかけた。 夢にまで見た人形が手に入って嬉しい筈なのに、 何故か胸の奥が疼いた。 その感情が何なのか、 由依はまだ知らない…。 それを打ち消すように、 「有難う、寿哉!嬉しい!」 と彼の空いいる方の右手に両腕を絡ませ、 喜びを表現した。 …可愛いな、由依。良かった。喜んでくれて… 寿哉は満足感で満たされていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加