第3話 棘

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第3話 棘

ほら、寿哉… またアメリアを見てる。 由依はそれを見る度 不安な想いが胸を締め付ける。 土曜日の夜、 寿哉はバイトを終えた由依を迎えに来た。 明日は日曜日。 二人で過ごせる日だ。 二人は食材を買い込み、 由依の部屋に来たのだ。 いつもなら幸せいっぱいで、 寿哉の事以外考えた事などなかったのに…。 「カレーにゃジャガイモはやっぱ外せないよな」 寿哉は嬉しそうにジャガイモの皮を向き、 由依に笑いかける。 アメリアと寿哉の事を考えていた由依 はハッと我に返り、 彼に微笑み返した。 「そうね!あと玉ねぎとニンニク、隠し味にリンゴよ」 と明るく切り返す。 「あとコーヒーとチョコを大匙一杯分、隠し味だろ?」 寿哉は茶目っ気たっぷりに答える。 二人は朗らかに笑い合った。 二人は大抵、 土曜日の夜は一緒に夕飯を作るのが日課だ。 そして日曜は二人でゆったり過ごす。 彼に会える土曜日の夜から日曜ににかけてを楽しみに、 大学もアルバイトも頑張っている日々だった。 アメリアを迎えて… 寿哉がアメリアを見るようになってから、 由依は …どうしたら彼が喜ぶか? 自分がどう振る舞えば彼は もっと自分を好きになってくれるか? どう声をかければ? どんな服を着たら? どんなメイクをしたら? と次第に彼中心に物事を考えるようになっていった。 その事が、 由依の胸に小さな棘となって突き刺さっていく。 今となっては、 アメリアが来る以前の自分が どんな風に彼と接していたか? 全く思い出せなくなってしまった。 アメリアが来てまだ 二週間ほどしか経っていないのに…。 その棘は少しづつ少しづつ、 アメリアに嫉妬する度に大きくなっていった。 「あれ?由依どうした?もう食べないのか?」 寿哉の指摘で、 由依は我に返った。 どうしたら寿哉は、 アメリアより自分を見てくれるだろう? その想いが終始頭を離れない… (いけない!私ったら!こんなにぼんやりしてたら、 寿哉は益々アメリアに気持ちが傾いてしまうわ!) 由依は慌てて俊哉が好きであろう笑顔を作り、 「お昼にね、ヒレカツ定食食べてケーキ食べたら… ちょっと食べ過ぎでまだ胃に残っているみたい」 と咄嗟に彼が安心するであろう理由を述べた。 …本当はただ、 どうすれば彼に愛されるか? だけを考えていただけなのだが…。
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