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第4話 鎖
「あれ?由依、なんだか痩せたんじゃない?」
大学の講義が終わった後、
友達の久子がそう声をかけてきた。
「そうかな?ちょっと食事に気を付けてるんだ」
由依は嬉しそうに答えた。
「元々細いんだから、体壊さないでよ」
彼女は気遣いを見せる。
ダイエットを決意してから10日経った。
極端に食事を抜いたりすると、
何年か後のに骨がスカスカになったり、
子宮に影響が出て子供が出来にくくなったり、
肌や髪がボロボロになってしまう…
という事は知っていた。
アメリアのように美しくなる為のダイエットなのに、
美容を損ねてしまうのは本末転倒である。
そこで由依は体を内側から温め、
基礎代謝力を上げようと
飲み物は全て「さ湯」に変え、
外出先にも持ち歩くようにした。
そして朝は高たんぱく低脂肪を心掛け
昼は野菜を中心にした食事を。
夜は根菜類を中心にした温野菜を食べる事にした。
脂肪を落とす為、
朝5時に起きてさ湯を飲み、
まず黒砂糖を一欠片舐めて血糖値を上げてから
1時間のウォーキングを始めた。
…目標は「アメリア」のように華奢で人間離れした美を手に入れる事…
3日で1kg位のペースで体重は減り
10日めには4kg体重が落ちた。
…あまり、
急激に体重を落とすのはリバウンドの元である。
だが、由依は目に見えて成果が出るのが
楽しくて仕方がなかった。
…もっともっと軽くなって、アメリアみたいになるの。
そしたら寿哉も前みたいに私だけをみてくれる筈…
由依の頭の中には、それしかなかった。
まるで鎖で縛られているかのようにアメリアの事が頭から離れない。
13日を過ぎた頃から食事の量を半分に減らした。
「由依、最近顔色悪く無い?」
久子が心配して声をかけてきたのは
それから6日後の事だった。
それを聞いて由依は嬉しかった。
顔色が悪いと言う事は
アメリアのように青白く透き通るような肌になってきたと言う事だ…。
由依はそう感じた。
20日を過ぎた頃には合計で10kg落ちていた。
それから由依は、
少し歩いただけで息切れを感じたり、
目眩を覚えるようになる。
さすがに毎朝のウォーキングは辞めた。
疲労困憊で大学にも行けなくなってしまいそうだからだ。
だが、その症状は…
自分が人間離れした美を手に入れる体質改善時期だ、
と由依は感じた。
一方、そんな由依を寿哉は誰よりも心配していた…。
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