第1章

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恥ずかしさで耳まで熱くなる気がしたが、呪うべきは過去の自分なのだから 怒りようもない。これならまだ未来への自分の手紙の方がマシだった。 俺は深く深くため息をついて立ち上がった。 「笑えよホリブー、俺はこの恥をかきに地元まで戻ってきたんだ」 「いやいや、これは傑作やわ。子供らしくていいやん」 「…。」 俺は無言でしのぶから手紙を取り返した。 全く、何を考えていたんだよ昔の俺は。まあ子供っぽいといえば子供っぽいが こういうのに入れるにはさすがに子供っぽ過ぎるだろうが…。 ふと視線を感じて手紙に記された自分の汚い字から目をあげると、 しのぶは先ほどまでの爆笑顔ではなく不思議な表情でこちらを、いや正確には 俺の持っている手紙の裏面を覗き込んでいた。 「なんだよ」紙をひっくり返す。 そこには赤えんぴつでいくつかの記号と、雑多に書かれた線。山?岩? それに不思議なキャラクターがいくつか書かれていた。 赤くて丸い体にゴーグルがついたような…見覚えはあるが名前はわからない。 しのぶは急に顔を寄せてきて手紙の裏面のラクガキをしっかりと見つめなおした。 「ホッタン、これ…宝の地図なんとちがう?」 「は?」 ******************** 28期卒業生タイムカプセルの開封セレモニーは15分押しでつつがなく終了した。 そのあと体育館でまた元校長の長い長い挨拶があり、各期の懇親会とあいなった。 俺はひたすら持って行った集合写真と先ほどの手紙のネタを元クラスメイトに 話しまくり、笑いをとったが、あの手紙がどういう意味をもっていたのか 今となっては分かる者はいなかった。 しのぶも女の子のクラスメイトたちと旧交を深めていたようだった。 3時間程がたち、そろそろお開きまたは2次会へという流れになったのだが ここでちょっとした問題がおこった。俺は参加の返信はがきを送れなかったので 2次会の参加メンバーにはカウントされてなかったのだ。(理由は簡単に説明した) 実際問題、一人二人の増減は問題なかったのだろうが、俺は2次会への参加を辞退した。 わりと満足してしまったのだ。ここにはちゃんと俺の事を覚えてくれている人がいて、 気になっていたタイムカプセルの中身もわかった。この上、元クラスメイト達と 酒を飲んだりしたらひどい潰れ方をしてしまいそうだったのだ。 けっして話のネタ切れというわけではない。
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