第1章

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「うーん…」 しのぶは額に軽くしわをよせて考えこむと一言「手紙」といった。 「え?」 「なんか物じゃなかった気がする。絵とか封筒とか「紙」の類」 「…マジで?」あんだけ必死に思い出そうとしたのに。 「なんかね、ホッタンにすごい見せて見せてって言ったんだけど結局 中身は教えてくれなかったの。それは覚えてる」 何だろう、手紙?誰に?その時の俺は何を考えていたんだろう。 それはもうすぐ明らかになろうとしていた。 ******* 作業をぼんやりと見守っている間に、何人かの元クラスメイトに声をかけられた。 ヨディと呼ばれてた吉田くん、メガネの博士キャラだった長谷川くん、斎藤くんに井上くん。 エトセトラエトセトラ。わりと俺の事を覚えていてくれてちょっと嬉しかった。 そしてギイギイ音が止んだ時、重そうなモニュメントがズルズル、ドスンと除けられた。 ぽっかりとした穴が姿を現すと周りから拍手がわきおこった。 俺もなんだか謎の感動を感じ始めていてつられて拍手する。 先ほどの男性教諭が穴に両手を突っ込んで、泥で汚れた大きな袋を ゆっくりと引っ張り出した。そして、その中から大きなくすんだ銀色の トランクケースのようなものが現れた。 記憶の中の同じ、写真にも写っていたタイムカプセルだ。 ふたたび元クラスメイトたちから歓声があがる。 カプセル自体のふたはそう時間がかからずに開いた。カプセルと 男性教諭の周りに一気に人が押し寄せる。 「まってまって、順番に名前読み上げるますからねー」 『はーい』みんな子供にもどったかのような素直なお返事である。 「1組あいはらくーん、あいはらだいごくーん」 「おっオレだ!」 相原くんはサッカーが上手な子だったが、今は結構太めのおじさんになっていた。 まあこの年になれば色々あるわな…。彼にはサッカーボールが刺繍された青色の きんちゃく袋が渡された。 「続いて1組いはらようこさーん いはらさーん」 「はーい」と返事しながら皆の前に出てきたのは幼稚園ぐらいの年齢のお子さんをつれた 井原さんだった。彼女はちいさいメモ帳のようなものをもらっていた。 あ・か・さ・た・なの順でどんどん名前が呼ばれていく。 「なんやろね、ホッタンがいれたの。」 「さあなー、未来への俺への手紙みたいな普通のやつかなあ…」 さっきしのぶに「手紙」と言われてから色々思い出そうと努力してみたが
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