1人が本棚に入れています
本棚に追加
元々、ユーゴはクレードルの中で人生を送るつもりはなかった。決められた場所で決められたまま一生を終えたくない。
いつかナガヌへ。それがユーゴの夢。
ディックへ真っすぐ向かったらばれるかもしれない、とユーゴは考える。機械相手にどこまで通用するか分からないが、逆方向に走った。木の陰に身を潜めて気配を伺う。
物音。足者にマイキーがいる。2のナンバリング。唐突に警告のビープ音を上げ始めた。歩行コースを外れたと認識したようだ。まずい。「止まれ!」
サッケルは静かに木に近づいた。標的は認識している。『安全より捕獲を優先せよ』のプログラムに従い、致命傷以上を与える判断をする。木の反対に回り込みながら刺した。
「?」
枝にからまったマイキーは停止している。その腕にリストコンソール。
サッケルのアームはマイキーを貫いていた。ユーゴはいない。
ユーゴは岩陰のトンネルめがけて走った。岩を飛び越えた瞬間、人影を見た。黒い布で体を隠し、ライフルを構えた相手もユーゴを見て呆然としている。
「リニー?」
「あなた…ユーゴ君?」
「リニー、ここでなにを」
「どうして…キミたちはここにいないはず…」
「なんだって?」会話がかみ合わない。「とにかく、逃げろ。サッケルが来る」
最初のコメントを投稿しよう!