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あれほど鳴り響いたサイレンが聞こえなくなっていた。
「先生、聞こえなかったんですか?」
「あぁ。校舎にいたらみんなから緊急コールが入ったから。マイキーが壊されなきゃもっと早かったんだが。さて。トニアはどこに行ったんだい?」
「トニアは」なんて説明すればいいんだろう。「その、俺と一緒にいて」言いながら思考を巡らせる。違和感が走る。「襲われました。サッケルに。そのとき機体を見たんです」
「ふむ。じゃあトニアは」
「…多分、もう」
「そうか。場所は?」
「僕たちが作ったトンネル…抜け道です。その、みんなの…」死体とは言いたくなかった。
「死体か? 大丈夫。もう全員分回収に来る頃だ」ソーイは急に、とてもリラックスした表情になった。
…回収?
「キミのコンソールはインプラントタイプに替えていなかったんだね? だから検知できなかったのか」
…検知?
「リストタイプは廃番になると言ったろう。まったく。探す手間をかけさせるな」
…手間?
ユーゴはリストコンソールを見た。はっとする。違和感の正体はずっと見えていた。
「先生?」
「なんだい」
「どこにいたんですか」
「だから、校舎に」
「どうやってここに来たんですか」
「歩いて来たに決まってるだろ」
「…嘘だ」
「何?」
「先生、この道知らないですよね。だから靴が泥だらけになった。さっきまでピカピカだったのに。サイレンだって聞いてない。先生、どこにいたんですか?」
「ほぉ。どうした急に」
「先生は緊急コールが入ったって言いましたよね…」ユーゴは顔面蒼白だった。「俺のに緊急コールは入ってない。誰もコールはしてない」
「なるほど」ソーイ先生は木にもたれかかった。「なかなか鋭いな。生徒相手にボロが出るとは。まぁ、キミは本当に違うようだな」
「違う?」
「よし。では、リニーはどこだ?」
ユーゴはソーイの発言の意味が分からない。冷や汗が首を伝う。何か変だ。
「質問に答えろよ。リニーはどこにいる。一緒にいたんだろ」
リニーって? クラスのリニー? 彼女も一緒にいたと思ってるのか? でもなぜ?
「先生…さっきから何の話を」
「リメインダーズのメンバーはどこだ?」
「なんですか、それ」
「アイザックプランは知ってるか?」
「先生、さっきから何の…」
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