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ユーゴは絶句した。サッケル。2…3…4台。最後に現れたサッケルのモニタアイの上についた血。トニアのだ。 「先生! 逃げて! そのサッケルがトニアを」 どのサッケルもアームが血まみれだ…そして忠実な部下のように、ソーイの背後に並んだ。 「な…」 「まぁ、そういうことだ」ソーイ先生の顔は、もう生徒が知っている顔じゃなかった。メガネにコンソールが表示されている。歩きながら操作していたようだ。 「友だちと一緒に死んだ方がよかったのに。最後くらい先生に迷惑かけるな」にっこり笑う。 「先生? 先生がみんなを…」 「俺が殺したら殺人犯だろう。ロボットなら事故だ。いや、作業か」  ユーゴは血が逆流する思いだった。  なぜ? どうして? 「お前たちは今回選ばれたんだ、不要な人間として。もうシオンがお前たちを保護プログラムから外したんだ。元々、記憶のないこどもたちの集まりだしな。役立たずということだ」 シオンが?  ソーイが手を挙げると、それを合図に4台のサッケルがユーゴを取り囲んだ。次の合図で容赦なくユーゴを刺すだろう。  考えろ。考えろ考えろ。 どうして殺される? 価値がないから。 価値があれば殺されない? 今価値のあるものはなんだ? 咄嗟に口から出まかせを吐く。「リニーの居場所、知ってます」  ソーイが手を止めた。眉をひそめる。「本当か」  次の…次の手は? この情報には価値がある。でもリニーの事なんて知らない。知らないと知られるな。そのためにはどうすれば… 「嘘はいかんよ、ユーゴ君。ただの時間稼ぎだろう?」  ユーゴは口を真一文字にした。選んだのは、沈黙。ただ真っすぐにソーイ先生を見る。  目をそらすな。悟られるな。知っていると思わせろ。ここからなら『ディック』まですぐだ…  静寂が走った。 「ユーゴ・リケルト!」ソーイが唐突に名を呼ぶ。 「お前は変わった子だな。成績にもムラがあるし…この状況でもまだ何かしようとしている。クラスメートが死に、ロボットが刃を向け、先生が敵になる。普通なら絶望するとこだ。なのにマインドレベルが低く安定している。混乱して飛びかかってくれりゃ、始末する理由になったんだが」 「先生がロボット三原則を破らせたんですか」 「おいおい、冗談はやめてくれ」メガネを直す。「そんな小さなレベルの話じゃない。これはすごいことだ。今日、世界がひっくり返ったんだ」
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