第一章

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 休日ということもあって、園内は混み合っていた。  それでも入場から三時間ほどで目当てにしていたアトラクション(特にミチが乗りたがっていたもの)のほとんどは消化し、三人は遊園地を順調に満喫していた。 「今日は来てよかったな」 「うん!」  ミチと正弘はそんな話しながら微笑みあった。  だが、昼過ぎに場内に響き渡ったアナウンスで、状況は一変した。 『ご来場中のお客様にお知らせいたします。ただいま、園内にてトラブルが発生し、入場ゲートを一時閉鎖させていただいております――』  最初は喧騒にまぎれていたそれに耳を傾け、立ち止まる客が次第に増えていく。 「なんだか、変なことになっているみたいだな」  正弘はハルに言った。 「まあ、まだ帰る予定ではなかったし、いいんじゃない?」  楽観的なハルはミチに抱きついていた。  そして、そのままの体勢で顔を覗き込むようにしながら 「そろそろ、お昼にしようか」 「えぇー?」  入場前とは打って変わって、ミチは不機嫌そうに頬を膨らませていた。 「もう帰らないと」 「え?」  ハルは目をしばたかせた。  ――あれだけ楽しみにしていたのに、自分の目当てのアトラクションに乗り終わったらこれだよ。  正弘は苦笑いした。 「帰りたいー」  ミチが眉間にしわを寄せ、両腕を振りまわす。 ハルが微笑を浮かべながらミチの顔を覗き込む。 「じゃあ、ミチの好きなカレーを食べようか。それから、ほかのアトラクションも見てみよう? ね?」 「むー」  いつもなら“カレー”と聞いた瞬間、条件反射的に表情を明るくするミチがむすっ、としたままだった。 「どうしたの? カレー食べたくないの?」  ハルの問いかけに、 ミチは仏頂面で、空を指差した。 「だってはやく帰らないと、雨が降ってきちゃうよ」
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