第一章

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「雨?」 「そうだよ。ほら、こんな風に!」  正弘が空を見るのは、これで今日何回目になるだろうか。  相も変わらずの晴天だった。  鳥も気持ちよさそうに飛んでいる。 雨の兆候なんてない。そう思った瞬間、べちょ、といやな感触がした。 「…………」  自分の左肩に視線を落としてから、再度空を見上げる。  爆撃を仕掛けてきた鳥はもう空のかなたに飛び去っていたが、視界にはまだ数羽の影が映っていた。 ないとは思うが、二の矢が飛来する前に避難したかった。幸い、近くに四方に壁のない、柱と屋根だけの簡易的な休憩所があった。  だが、それには…… 「ハルさん?」  いつの間にかかばんに入れていた傘を開き、座り込んでいる少女の肩をたたく。 「ハルさーん…………ハル?」 「…………あっ、正弘?」 「どうした?」 「……なんでもない」  冷静になった彼女は周囲の視線に気がつき、赤面しながら立ち上がり傘をたたんだ。 そして三人で休憩所のテーブルに着くと、正弘の爆撃された肩を見て一言。 「とんだサプライズプレゼントね」  正弘が力なく苦笑すると、ハルは笑った。  ミチはハルが面白いことを言ったのだと勘違いしたようで、 「“さぷらいずぷれぜんと”って?」  そうハルに訊いた。  彼女は息を整えながら、どう教えたらいいものか、と考えたようだ。 「たとえばミチは今、いきなりケーキをもらったらどう思う?」  ミチは周りを見回してケーキ屋がないことを確認してから、 「びっくりする」 「そうだよね。でも、うれしいでしょ? しかも、予想もしていなかったから、余計に」 「……そうかも!」  ミチはうなずく。  そして、複雑そうな顔をしながら正弘を見た。 「じゃあ、さっきのはまーくんにとってうれしいプレゼントだったの?」 「ぶふぁ! ……きっと、そういうことじゃないかな?」  ハルが悪い顔をしながら笑う横で、ミチは目を輝かせていた。  いくら自分を目の敵にしているからといって、ミチに変なことを吹き込むのはやめてほしい。  そう彼が思って口を開こうとしたとき。その機先を制するように、ミチは言う。 「じゃあじゃあ、私からも“さぷらいずぷれぜんと”!」
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