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「雨?」
「そうだよ。ほら、こんな風に!」
正弘が空を見るのは、これで今日何回目になるだろうか。
相も変わらずの晴天だった。
鳥も気持ちよさそうに飛んでいる。
雨の兆候なんてない。そう思った瞬間、べちょ、といやな感触がした。
「…………」
自分の左肩に視線を落としてから、再度空を見上げる。
爆撃を仕掛けてきた鳥はもう空のかなたに飛び去っていたが、視界にはまだ数羽の影が映っていた。
ないとは思うが、二の矢が飛来する前に避難したかった。幸い、近くに四方に壁のない、柱と屋根だけの簡易的な休憩所があった。
だが、それには……
「ハルさん?」
いつの間にかかばんに入れていた傘を開き、座り込んでいる少女の肩をたたく。
「ハルさーん…………ハル?」
「…………あっ、正弘?」
「どうした?」
「……なんでもない」
冷静になった彼女は周囲の視線に気がつき、赤面しながら立ち上がり傘をたたんだ。
そして三人で休憩所のテーブルに着くと、正弘の爆撃された肩を見て一言。
「とんだサプライズプレゼントね」
正弘が力なく苦笑すると、ハルは笑った。
ミチはハルが面白いことを言ったのだと勘違いしたようで、
「“さぷらいずぷれぜんと”って?」
そうハルに訊いた。
彼女は息を整えながら、どう教えたらいいものか、と考えたようだ。
「たとえばミチは今、いきなりケーキをもらったらどう思う?」
ミチは周りを見回してケーキ屋がないことを確認してから、
「びっくりする」
「そうだよね。でも、うれしいでしょ? しかも、予想もしていなかったから、余計に」
「……そうかも!」
ミチはうなずく。
そして、複雑そうな顔をしながら正弘を見た。
「じゃあ、さっきのはまーくんにとってうれしいプレゼントだったの?」
「ぶふぁ! ……きっと、そういうことじゃないかな?」
ハルが悪い顔をしながら笑う横で、ミチは目を輝かせていた。
いくら自分を目の敵にしているからといって、ミチに変なことを吹き込むのはやめてほしい。
そう彼が思って口を開こうとしたとき。その機先を制するように、ミチは言う。
「じゃあじゃあ、私からも“さぷらいずぷれぜんと”!」
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