遥か～夢を叶え続けるということ 《はるか遠い君へ1 》

リュートに会う前の可奈

「あーよく寝たわ~」
「え、よく寝たって?」

一晩中病棟を走りまくった私の横で、美香はそう言った。

「眼科の患者さん元気な人多いから、ストレスチャーで寝てた。」

ストレッチャー（移動式ベット）で寝てた！！

「え、見回りは?」
「あ、見回りの時間にアラームしといて寝るの」

夜勤で寝る！！！　 アラームして！！！
なんだそれ！

私なんて、夜中じゅう バイタルチェック（体温 血圧 脈拍 呼吸などの状態をみること）しないといけないし、点滴交換、 体交（自力で体の向きを変えれない人の体の向きを変えること。普通は２時間ごと） 朝一で顔を拭いてあげたり、朝食の介助.....

とにかく、脳外科は重症の動けない人も多いため、夜間2人のナースでしないといけないことが山ほどあるのだ。

一晩中歩きまわり、朝方には象の足になったかのごとく腫れて重い。
重い足を無理やり動かしながら、 新しい口内炎ができるのを感じながら、仕事をするのだ。

そんな私の横で...... 給料は同じだけもらっているのに......

片や先輩に怒鳴られ、体にムチを打ちながら、仕事をしているのに.......
同じ新卒の美香は夜中寝れて、こんなに楽しそうに仕事をしている。

うううう......

心が叫び出す。

「可奈 大丈夫?」
「あああ......まあね」

美香に無理やり作った笑顔を見せた。