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何かを少しでも留めておきたくて。
抗うように両手を組んだ。
「あぁ~もう、やっぱり怖い!」
自分の腕を摩り、怯えている美利ちゃんの目線の先には、鳩にお菓子を振りまいている人がいた。
飛び立った鳩たちはそこへ集まっていた。
鳩に囲まれているのは、いつもの餌やりの人とは違い、3歳児くらいの男の子とお母さん。
きっと、子どもがやってみたいと言ったのだろう。
「ねえ、もう帰ろ?」
「うん。そうやね」
今度は美利ちゃんが不憫なので、帰ることにした。
方向転換するとギシッと金属がしなる音。
彼女がゆっくりと背中を押し、進み始める。
「ありがと。美利ちゃん」
「どーいたしまして」
私の後ろで、彼女がニコッと愛らしい笑顔を返す。
足元は、散った花弁が絨毯のように積み重なっている。
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