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その上を踏みしめ、ゆっくりと二人で進んでゆく。
いつの間にか日も落ちてきて、空と川面はオレンジ色へと変わりつつあった。
「なんか風が強くなってきたね。夜、いっぱい散らんかったらいいけど…」
桜並木を歩き進めながら、美利ちゃんがちょっと寂しそうに呟いた。
瞬間、頭の中でふと何かが過った。
漠然とした何か。
何だろう…?
だけど、はっきりと思い出せなくて。
見上げれば、とめどなく舞う薄紅色の花。
見下ろせば、無残に踏みしめられた褐色の花。
狂うように空に舞い、静かに地に落ちる。
その中をくぐり抜けながら。
私は一人、思い出せない何かに心を囚われていた。
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