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夜の帳が落ちると、風がさらに強くなっていた。
室内にも関わらず、ヒューヒューと轟音が聞こえてくる。
窓から外を覗く。
住まいは河沿いなので、ここからでも桜並木が見える。
しなる枝から、次々と花弁が渦巻いて散っていた。
「桜も、もう終わりやねぇ…」
小さく独りごちる。
すると、寄り添う気配を感じる。
隣を見上げると、あの人も窓の外を眺めていた。
「…それが自然の摂理やけん、仕方がない」
そう言うと、彼は寂しそうに微笑んだ。
「ホント…情緒ないんやけ…」
私が不満げに唇を尖らせると、ハハハと今度は声を上げて笑った。
そして、私の手に大きな手を重ねて、散りゆく桜を見つめた。
私も視線を桜へと移す。
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