静心

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「花は散ってしまうけど、枯れたわけやない。季節は巡って、また花は咲く。そして、皆また桜のことを思い出す。忘れていても、また思い出す」 諭すように言葉を繋ぐ彼の横顔を不思議な気持ちで見上げていた。 私は、懸命に何かに抗っていた。 消えゆくもの。 忘れゆくもの。 すべて失いたくないと。 けれど、彼の言葉はストンと胸に落ちた。 どこかでホッとする自分がいた。 「…そうやね」 肩の力が抜けて、自然と口元が綻んだ。 「私も…あなたのこと忘れたいと思ったことあったけど、やっぱり忘れられんかった…」 震える声で本心を吐き出し、ぎゅっと彼の手を握り返す。 すると、彼が私をグイッと引き寄せた。 ああ…彼の匂い… 懐かしい感覚に身体を預ける。 そして、気付く。 漸く彼と触れ合えていることに。
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