静心

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が、しかし 「あ!思い出した!」 「え?何?」 すぐに手を離してしまい、彼が怪訝な顔をする。 「ほら、歌。百人一首!」 「ああ…どんなだっけ?」 枕元に置いていたものを取り、昼間と同じセリフを吐いた彼に見せる。 「これやろ?」 「おお!そうやった。そうやった!」 目尻を下げ、嬉々として喜ぶ顔は、昔から変わらない。 「あれ?これ下の句は何だっけ?」 ここまでお膳立てしても思い出せないとは…ほとほと呆れてしまう。 「ホントにもう…!この下の句は…」 と言いかけた時 「おーい!ごはん出来たよぉー!」 奥のリビングから、美利ちゃんの大きな声が届いた。 示し合わせたように二人の視線が合う。 「そろそろ、かな…」 「…そやね」 もう一度、窓の外を眺める。
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