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それが何羽も飛んでくるのだから、たまったもんじゃない。
あのふてぶてしい鳩さえ逃げるのだから。
もともと鳥が苦手な美利ちゃんには、恐怖でしかない。
だから、正確に言えば、彼女が怖がっているのは鳩にパン屑を撒く人ではなく、それにたかって来るカモメの群れなのだ。
「何で、餌とかやるんやろ」
河には春の風物詩である白魚漁の仕掛けにカモメが数羽とまっている。
それらを恨めしそうに見つめながら、彼女はプクッと頬膨らませた。
「やっぱり動物好きな人は、近くで見たいっちゃない?」
「え~、鳥って動物と違くない?ほら、猫とかは可愛いけど」
猫に餌やりしている老人へ視線を送り、私に同意を求めてくる。
だが、その猫も本来は野良な訳で、餌付けしている行為は鳩と一緒だ。
こうなるとカモメも不憫に思えてくる。
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