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「…なんだ、もう来んかと思っとった」
「見頃も最後かなと思って」
私の隣に座り、桜を見上げる。
つられて仰ぐ。
ここの桜は殆どがソメイヨシノ。
白、桃色、薄紅色。
みんな同じ色のようでそうではない。
それぞれに濃淡が違い、繊細なコントラストを生み出す。
ヒラヒラと雪のように舞い落ちる花弁。
煌めく水面と河鳥の群れ。
生命の瑞々しさと儚さ。
自然がおりなす美しい光景に心を奪われる。
「綺麗やねぇ…」
隣からもう一度同じ言葉が漏れる。
「そうやね…」
今度は素直に応えた。
「そういえば…百人一首でこんな日のことを歌ったのがあったやん?」
「ああ、なんかあったね…」
懸命に記憶を辿るが
「どんなのだっけ?」
「どんなのだっけ?」
結局、二人とも思い出せずに苦笑い。
1つ離れたベンチで、美利ちゃんはわいわいと友達と盛り上がっている。
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