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私たちは、静かに、ただ過ぎる時に浸っていた。
それが寂しかったり、つまらなかったり…というわけではなく。
この美しき光景に溶け込むように。
散りゆく花に想いを馳せ。
穏やかに。
緩やかに。
心地良い時に身をゆだね、目を瞑った。
ふわりと風が優しく頬を撫でる。
愛しい人が触ってくれたような温かさ。
「あれ?寝ちゃった?」
美利ちゃんの声が聞こえて、ゆっくりと瞼を上げる。
屈んだ彼女が、心配そうに私を覗き込んでいた。
「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん。大丈夫」
少しでも安心するように、膝の上に乗せられた美利ちゃんの手にポンと自分の手を重ねた。
彼女はホッと息を吐いて、安堵した表情を見せる。
そして、気付く。
隣を見ると、あの人の姿が消えていた。
「あら?もう帰った?」
「ああ、うん。友達は帰ったよ」
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