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美利ちゃんは、自分の友達のことかと勘違いしたようだ。
「フフフ…違うとよ。さっきまであの人がおって…」
「あの人?」
私が説明すると目をぱちぱちさせて首を傾げるが、すぐに思い当たったようで、「ああ!」と声を上げた。
そして
「なんだぁ、私も会いたかったなぁ…」
眉を八の字にして残念そうに呟き、美利ちゃんは立ち上がった。
その瞬間、バサバサと大きな羽音。
鳩が一斉に飛び立つ。
ブワッと風が起こる。
「きゃっ」
「あ…!」
美利ちゃんが小さな悲鳴を上げたと同時に、掌の中にあった一片の花弁がするりと風に攫われ、舞い散る多くの花弁とともに消え去った。
何もなくなった掌。
誰もいなくなった隣。
そこにあったものが消える。
気づかぬうちに。
何かが少しずつ。
指の隙間から零れ落ちてゆくように。
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