あと一点の高みへ

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「お兄ちゃんやお兄ちゃんや、ちょいと聞いておくんなまし」 「どうした妹よ。  正確には妹っぽいキャラ付けで執拗に俺に絡んでくる前の席の女子よ。どうした」 「次の数学の授業、小テストが返却されるとの話なんですのよ」 「なんだと。それじゃあ呑気に昼休みに昼飯なんて食べてる場合じゃないではないか。  今から全神経にコカインでも注入してユリ・ゲラーもかくやというサイキック念写を」 「またやるんですかね。あなたはこの妹と再び勝負を試みるのですかね」 「無論そうだが、それはさておきお兄ちゃんは一回号泣するぞ。  兄というのは妹に話を遮られるのを何よりも嫌う習性を持つんだもう我慢できないお兄ちゃんは泣くからなうぎゃぁぁぁぁん」 「どうせ今回も同じ結果になるんですけれどね」 「うぎゃぁぁぁぁん、いやいやそんなうぎゃぁぁぁぁん、  そんな結末を俺は認めなうぎゃぁぁぁぁん、いやうるさいなこれ5秒ほど黙ろう」 「けろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろけろ」 「うむ思わず絶頂しかけるほど不愉快な5秒間であった。  いつだってお前はエクスタシーの先端を行く存在だよ。滴り落ちるレベルだよ」 「携帯で 『翌日』って 打とうとしてるのに 『欲汁』とか  かつて見たことない単語に 誤変されると 自分自身が 酷く 汚されたような  気分になるんだな さだお」 「お前さてはみつおの文章読んだことないだろう」 「さだお」 「そこだけ取り上げないでくれ俺の本名じゃん頼むからお兄ちゃんて呼んで」 「お兄ちゃん、妹はもういい加減諦めた方がいいと思っておるのですよ。  どうせお兄ちゃんが勝つ可能性は万に一つもないのですしね」 「なにを言うか俺の英和辞典に諦めるの文字はない!  兄が妹に負けるわけにはいかんのだ! たとえそれが――」 「マジレスすると英和辞典にないならそれは視力が弱いんだと思うの。  ⊂∪∩⊃‰が読めない人間なんだと思うの」 「ええい遮るな! それくらい読めるわ→、↑、↑、←、パーミルだ!」 「痛恨の初歩的ミスに驚きを禁じ得ない」 「やかましい! とにかくお兄ちゃんはお前に勝つぞ!  絶対に――お前よりきっかり一点上の点数で成績を上回る!!」
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