誰にも言えない三十路の呟き~梨香子編

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相原との出会いは何年前だろう? 私が入社三年目の時の新入社員。 そう、あの子と私には三つの年の差がある。 当時から、海事女子の間では片桐君と戸川君の二人が人気を二分していた。 二人とも群を抜いて仕事ができる。 片桐君は王子のような甘く涼やかなルックスで、温厚で誰にでも優しい完全無欠型。 目が合うとフワッと浮かべる微笑みに、女の子はみんな夢見心地になる。 戸川君はそれとは対照的だ。 冷たい切れ長の目、通った鼻筋、薄い唇。 その外見通り、性格も超クールで愛想がない。 目が合うと凍死しそうな冷たさが女を引き付ける、毒性を持つ男。 それぞれ白王子、黒王子と呼ばれて「どっち派?」なんてよく話題になってたけど。 私は口では黒王子と答えてたけど、実はどっち派でもない。 私の目がいつも追い掛けてしまうのは、あの子。
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