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森の道へ
もしかして、この森の深いところまで行ってしまうと、知らず知らずに、何も見えなくなってしまって、もしかすると、何もかもすっかり忘れてしまうのかもしれません。
そうそして、暖かい風が吹く、大きな大きな森の中の長い長いこの森の道を、お空を飛ぶはずの小鳥さんが、空を飛ばずにピョンピョンと、跳ねように歩いていました。どうして空を飛ばずに歩いているのでしょう。どうして飛ばずに歩いているのか、
大きな大きなこの森の中、
【今はまだ、誰もそれは知りません】
草かげの子リスたちや、お花畑にいた子ダヌキたちも、気になって小鳥さんに話しかけました。
「小鳥さん、小鳥さん」
「小鳥さんは、どうして歩いているの?」
その言葉に小鳥さんが返事をしました。
「僕は、大切なものを探しているのです」
小鳥さんは何かを探しているようでした。小鳥さんは、一体何を探しているのでしょう。
大きな大きなこの森の中、
【今はまだ、誰もそれは知りません】
小鳥さんは、その森の道の近くに流れる小さな川のほとりでちょっとひと休み。
川面に所々ひょっこり出ている岩をピョンピョンと跳ねて、日当たりの良い川の向こう岸へ渡って日向ぼっこをしています。しばらくすると小鳥さん、その小さな川の上を泳いだりしていました。小鳥さんは、泳ぐのは初めてだったのですが、思っていたよりも上手に泳げたので、とても楽しそうです。
ちょっぴり疲れた小鳥さんは、森の奥から吹く暖かい風を浴びながら、また日向ぼっこをしています。もしかしたら、この森のキャラメルのような甘い香りに誘われて、少しうたた寝しちゃっていたのかもしれません。
そして、しばらくすると小鳥さんは、川面の岩をまたピョンピョンと跳ねて、森の道へと戻りました。
すると、小鳥さんのすぐ近くの大きな大きな木の上にいた、茶色い毛並みの綺麗な綺麗な一匹のお猿さんが、小鳥さんに話しかけました。
「小鳥さん、小鳥さん、はじめまして」
「君は、ピョンピョンと跳ねるのがとても上手だね」
「小鳥さんは、どうしてお空を飛ばずに歩いているの?」
すると、小鳥さんは答えました。
「実は、大切なものを無くしてしまって」
「僕は、それを探して歩いているのです」
それを聞いたお猿さんは、こう返事をしました。
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