森の道へ

4/4

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
とても悲しそうな顔の小鳥さん。お猿さんは黙って小鳥さんのお話を聞いていました。  どうして、小鳥さんは、悲しい顔をしているのでしょう?  どうして、小鳥さんは、空を飛ぶのが怖くなってしまったのでしょう?  大きな大きなこの森の中、 【今はまだ、誰もそれは知りません】  小鳥さんは、お猿さんに話し始めました。 「あのね。昨日の昨日の……。ずっとずっと前の昨日のこと」 「その日、僕は仲良しの友達と空を飛んで遊んでいたんだ」 「すると急に風が強くなってきて、あっという間に嵐になってしまって」 「突然吹いたとても強い風に僕は飛ばされてしまって……」 「僕が気が付いた時には、この森の入口の近くで目が覚めたんだ」 「僕はどれくらい寝てしまっていたのか、それにこの場所がどこだかも分からないし、その遊んでいた友達ともはぐれてしまって」 「それから僕は、空を飛ぶのが怖くなってしまったんだ」  お猿さんは黙って、小鳥さんのお話を聞いていました。 「だから僕は、この森の入り口で目覚めてから空を飛ぶのがとても怖くなって」 「だから僕は、歩きながらはぐれてしまった大切な友達を探しているんだ」  お猿さんはまだ黙って、小鳥さんのお話を聞いています。 「このことを誰かに話すと、またあの嵐を思い出して怖くなって、はぐれた大切な友達を思い出して悲しくて、辛くなりそうだったから、だから僕は、誰にもこのことを話したくなかったんだ」  小鳥さんが歩いていたのは、空を飛ぶのが怖くなってしまったから。  小鳥さんが探しているのは、大切な大切な友達だったのです。  お猿さんは黙って小鳥さんのお話を聞いていました。どうしてずっとだまっていたのでしょう? すると、お猿さんは小鳥さんに言いました。 「そうだったんだね。小鳥さん」 「とても辛くて、悲しいことだね。小鳥さん」 「僕ね、前にも誰かと、そう、君みたいに探し物をしている子のお手伝いをしたような、そんな気がするんだけど……」 「全然思い出せないんだ。だけど、君もみつかるといいね。その大切な友達、そしてまたあの大空を飛べるようになったらいいね」 「うん、お猿さん。ありがとう」 小鳥さん、こちらこそ素敵な羽をありがとう」  二匹はここで、大きな大きな笑顔を作って、サヨナラをしました。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加