2人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
とても悲しそうな顔の小鳥さん。お猿さんは黙って小鳥さんのお話を聞いていました。
どうして、小鳥さんは、悲しい顔をしているのでしょう?
どうして、小鳥さんは、空を飛ぶのが怖くなってしまったのでしょう?
大きな大きなこの森の中、
【今はまだ、誰もそれは知りません】
小鳥さんは、お猿さんに話し始めました。
「あのね。昨日の昨日の……。ずっとずっと前の昨日のこと」
「その日、僕は仲良しの友達と空を飛んで遊んでいたんだ」
「すると急に風が強くなってきて、あっという間に嵐になってしまって」
「突然吹いたとても強い風に僕は飛ばされてしまって……」
「僕が気が付いた時には、この森の入口の近くで目が覚めたんだ」
「僕はどれくらい寝てしまっていたのか、それにこの場所がどこだかも分からないし、その遊んでいた友達ともはぐれてしまって」
「それから僕は、空を飛ぶのが怖くなってしまったんだ」
お猿さんは黙って、小鳥さんのお話を聞いていました。
「だから僕は、この森の入り口で目覚めてから空を飛ぶのがとても怖くなって」
「だから僕は、歩きながらはぐれてしまった大切な友達を探しているんだ」
お猿さんはまだ黙って、小鳥さんのお話を聞いています。
「このことを誰かに話すと、またあの嵐を思い出して怖くなって、はぐれた大切な友達を思い出して悲しくて、辛くなりそうだったから、だから僕は、誰にもこのことを話したくなかったんだ」
小鳥さんが歩いていたのは、空を飛ぶのが怖くなってしまったから。
小鳥さんが探しているのは、大切な大切な友達だったのです。
お猿さんは黙って小鳥さんのお話を聞いていました。どうしてずっとだまっていたのでしょう?
すると、お猿さんは小鳥さんに言いました。
「そうだったんだね。小鳥さん」
「とても辛くて、悲しいことだね。小鳥さん」
「僕ね、前にも誰かと、そう、君みたいに探し物をしている子のお手伝いをしたような、そんな気がするんだけど……」
「全然思い出せないんだ。だけど、君もみつかるといいね。その大切な友達、そしてまたあの大空を飛べるようになったらいいね」
「うん、お猿さん。ありがとう」
小鳥さん、こちらこそ素敵な羽をありがとう」
二匹はここで、大きな大きな笑顔を作って、サヨナラをしました。
最初のコメントを投稿しよう!