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だからあの間違った噂を否定するためにも、成瀬ちゃんのところに帰って来ないとね、戸川っち。
「いつ日本に帰って来んの?」
「本帰国?三年後かな」
「そうじゃなくて一時帰国とか、それ以外とか」
“それ以外”の意味は、悠長に一時帰国まで待ってちゃ駄目だってこと。
成瀬ちゃんの横には王子がぴったり引っ付いてるんだから。
「できるだけ早く」
戸川っちは出国ゲートを眺めながら独り言のように、でも力強く言った。
「一時帰国だと来年夏以降になるから。だから上にゴネて、年末には帰りたい。いや、帰る」
最後は相原君の存在なんて頭にないようで、宙を睨んで吠えた。
「とにかく帰る!」
駐在員はなかなか個人都合で帰国しにくいんだろう。
「そっか……ま、なんとかするから、それまで頑張れ、戸川っち」
そろそろ時間だ。ゲートに踏み出しながら振り向いた。
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