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「あー、俺、急用で帰るな? 風呂入りたかったら入れば? 支払いも頼むわ」 そして、呆然と立ち尽くすあたしを振り返ること無く、彼は部屋を出ていった。 いや、厳密には出ていこうとしてドアが開か無くて、彼はもう一度「くそっ!」と吐き捨てた。 「急いでるんだって! 早く精算しろよ!」 「あ、うん……」 言われて慌てて自動精算機にお金をつっこんだ。 そしてカチッとロックが解除されると彼は何も言わずに部屋から出ていった。 今度こそ。 「……なん、だったの?」 少し、頭の中を整理してみよう。 かかってきた電話は『実家』からで、自分のことをパパって……、いやいや、大の男が『ママ』ーー?
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