ご褒美は甘い蜜の味（旧題：口遊んだのは、君の名前）

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トイレの個室に入ってため息を一つ落とす。

26にもなって、一人だなんて……。

この年になると少なからず『結婚』なんて文字がチラつく。

あたしは、本気だったのに。

ボタンを押して水を流す。

本気だったけど、もう涙も出ないなんて呆気ないな。

泣かれていく水に、いろんな感情も流されていくみたい。

もしかしたら、あたしは一番にはなれない体質なのかもしれない。

誰か大切な人がいる誰かにしか、惹かれない体質なのかも。

そうなるとあたしは、一生結婚なんてものにありつけないことになる。

「仕事、しよ」

トイレから出ると窓から指す光は明るいし、鏡に映るあたしは泣いてない。

だから手を洗ってオフィスに戻った。