ご褒美は甘い蜜の味（旧題：口遊んだのは、君の名前）

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定時にあがっても約束なんてない。

でも真っ直ぐに家に帰るのは寂しいし、町中をブラブラする気にもなれない。

前にも感じたことはあるけど、彼氏と別れるとあたしは手持ち無沙汰になる。

彼と付き合ってる間は、友達との約束もおざなりで、結果がこれだ。

こんなことばかりしてたら、将来寂しい老後を迎えそう……。

「穂積さん、残業なの？　珍しいね」

同じオフィスの営業マンにそう言われて、苦笑いで返した。

この状況で察してくれる同期もいて、コンパに誘ってくれたけど断った。

恋愛の傷は恋愛で癒やす、が信条のあたしだったけど、いい加減自分の見る目の無さにはがっかり感がハンパない。

勿論彼氏は欲しいけど、次こそはあたしだけを見てくれる人がいい。

コンパで運命の人に出会える可能性を否定はしないけど、運命の人ならもっと運命的な出会いがあってもいいんじゃないかな？

なんて乙女チックなことを考えながら、キーボードを叩いた。