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「なあ、アト」
「ああ?」
「いっそのこと、崖に飛び込んでみるか?」
「はあ!? 何言ってんだお前!」
ライルの正気とも思えない発言に、俺は目を向いて抗議した。
「こんな高さから落ちたら死んじまうだろうが!」
「だけど、このままじゃモンスターに食われちまうぞ?」
「私、食べられたくない。グスッ……」
「……チッ!」
泣き出したミリアについ舌打ちした俺だが、確かにモンスターに食われるのは良い気分じゃない。
「何か手があるのか?」
「幸い、下には川がある。上手くいけば助かるかもしれない」
「一か八かってことか……。悪くねえかもな」
俺がニヤリと笑うと、ライルも不敵な笑みを浮かべた。
「嘘でしょ?」
ミリアは震え上がったが、ライルが宥めるように言った。
「いいか。この作戦はお前の手にかかってるんだ」
「私の?」
「ああ。お前の風の魔法で俺達の体を包み込むんだ。そうすれば、落ちる速さをを緩めて川の中に落ちる事が出来るかもしれない」
「そ、そんな……」
ミリアは不安そうに首を横に振った。
仕方がない。俺でも気後れしそうな作戦だ。
だが、俺達が生き延びるにはそれしか方法がない。
俺は安心させるように、ミリアの肩に手を置いた。
「ミリア。お前の魔法の力なら大丈夫だ。上手くやれる」
「アト……。分かった。やってみる」
ミリアが頷いたのを機に、俺達は武器を収め崖へと飛び込んだ。
「なっ!? 待ちやがれ~!」
悔しそうなモンスターたちの声が遥か頭上から聞こえてくる。
俺達はミリアの風の魔法に包まれながら、崖下の川へと無事に着水した。
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