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その日は雪が降る寒い日だった。 俺の感覚は寒いしかなくって、何も考えず ただ歩いていた。 歩き疲れ、ふと足を止めた。 俺は目の前に広がったあの景色を 忘れることは無いだろう。 雪が降るくらい寒い冬に なんてことない広場で、桜を見たあの日を。 そして、桜の木の下にいた あの綺麗な少年も。 ………………………………………………………………………………………… 「どうしたの?裕也」 俺があの日のことを思い出していると 秀が話しかけて来た。 秀とは、一緒に暮らしている。 秀はあの桜の日の少年だ。 あの日、あるはずの無い、咲くはずのない 桜の木の下で見つけた美少年の秀。 秀を確認し俺がもう一度桜を 見た時にはもう桜の木はなかった。 俺は、あの不思議な桜の木を 未だに忘れたことはない。 綺麗な満開の桜の木、桜から落ちる 花びらが秀にすべて落ちる。 あの光景を綺麗以外の何に 例えればいいのだろう。 ………………………… あの日以来、あの桜を見ることは なかった。 あの不思議な桜の下にいた 秀を俺は、奇跡と呼んでいる。 もう一度あの桜を見たい でも、見てしまっては秀がどこか 遠くに行ってしまう気がする。 だから、奇跡なんか起きなくたって 秀と居れれば。
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