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「あの、戸川君は元気ですか?」
意を決したように口を開いた成瀬ちゃんの指が、ぎゅっとトレーの縁を握っている。
初対面の俺に聞くのに、すごく勇気が要ったんだろう。
それにもし由里ちゃんの噂を聞いて誤解してたら、近況を尋ねるのも恐かっただろう。
だから本当のことを教えてしまおうか、少し迷った。
「戸川っち?元気だよ。仙人になってるけどね」
「専任……?忙しいんですか?」
成瀬ちゃんの表情が心配そうに曇った。
「ああ、今頃ポエム作るのに忙しいかもね」
「ポ、ポエム?」
「うん、結構泣けるやつ」
成瀬ちゃんは訳がわからないといった顔で首を傾げている。
謎や誤解は本人が解くのが一番だ。
その役割は戸川っちに置いておいてあげないと、と思う。
あとは戸川っちに聞いてね。
相原君はとりあえず成瀬ちゃんと顔見知りになって、状況を探れたらいいのだ。
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