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でも、成瀬ちゃんは遠くを見ながら、突如ポツリと呟いた。
「私……そろそろ違う世界が見たくなりました」
それからはっと我に返ったように慌てて笑顔を浮かべた。
「泣き言はいけませんよね。相原君や同期のみんなも頑張ってるから」
その笑顔がどこか寂しそうに見えて、何となく胸がツンと痛んだ。
ぶらぶらと海事に戻りながら成瀬ちゃんとの会話を振り返る。
思い詰めた顔、寂しそうな笑顔。
まだ全然、戸川っちを忘れてないんだろうな。
戸川っちだって、成瀬ちゃんを綺麗に忘れて仕事にプライベートに邁進してる訳じゃないんだよ。
“年末には帰る!”
戸川っちはそう言ってたよ。
きっと成瀬ちゃんのためだけに。
もう少しの我慢だ、成瀬ちゃん。
でも、廊下ですれ違った梨香子先輩のよそよそしい会釈に、こっちまで取り残されたような寂しい気分になった。
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