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「こら、暇そうな相原」
あれから二ヶ月、12月の昼休み。
メールを打ちかけて、どう書こうか迷いながら熱いコーヒーをすすっていると、美香先輩に頭を叩かれた。慌ててスマホを隠す。
「暇そうなアンタに頼みがある」
美香先輩はキコキコと隣の椅子を引っ張ってきて横に来た。
その距離、異様に近い。
「暇じゃないんですけど」
「頼みってのはね、これよ」
人の話を全然聞いてない美香先輩は、折り畳んだ紙を取り出した。
「何すかコレ」
アドレスと品番らしき英数文字が書いてある。
見たところ、イタリアの有名なジュエリーショップのアドレスらしい。
美香先輩はさらに顔を寄せてヒソヒソ声で言った。
「この品番ありますかってここにメールして欲しいのよ、英文で」
「プライベートの問合せですか?何で自分でやらないんですか」
「英語が苦手だからに決まってんでしょうが」
それでよく海事で生き残ってるよなと思いつつ、怖いから渋々承諾した。
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