相原君の成瀬ちゃん観察日記

「何？まずかった？」

「もう触らないで下さいっ！メール打てばいいんでしょ、打てば」

最近の成瀬ちゃんの表情を見てると、年末に帰ると吠えてた戸川っちのあの言葉、そのまま信じて待ってていいのか不安になった。

“違う世界が見たくなりました”

成瀬ちゃんがふと洩らしたあの台詞が今頃になって気になった。

会社辞めるとか。

もう王子に任せてしまうとか。

とにかく、早くしないと何か好ましくない変化が起き……

「ちょっと相原早く！昼休み終わっちゃうじゃないの」

「今書いてますって！人に物を頼む態度ってもんがあると……」

無言の殺気にフェードアウト。

「個数とかありますか？」

「二つ」

二つ……？
同じ宝飾品を、二つ？

「サイズは９号と１２号」

まさか……。

ピコンと顔を上げて美香先輩の顔を見つめると、美香先輩が憮然とした表情で唸った。

「可笑しいか」

「俺、何も言ってません」

書き終えて送信すると、美香先輩はちょこっと女の子の顔して“ありがと”と嬉しそうに微笑んだ。