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「遠くの高いお山ばっか見てないで、足元で綺麗なお花が泣いてるのに気付きなさいって話」
「綺麗なお花?」
美香先輩が“やれやれ”とぼやきながら立ち上がった。
「どうしようもないわね、あんた。だからね、成瀬さんもいいけど海事の美女軍団を見なってこと」
美女……。
憤然と吠える美香先輩のテカる鼻を見てると、つい口が滑った。
「でも成瀬ちゃんの鼻はテカったりしてない……です……」
まずい。
カツカツと横に来た美香先輩に殴られる、と身を縮めた瞬間、ガゴン、と自販機の音がした。
「あーっ、何勝手に押してんですか!」
「いい給料貰ってるくせにケチ臭いわね。百円拾ったんでしょ?」
「小学生ん時ですよ」
美香先輩はこれこれ、と満足気に自販機から缶を取り出した。
「梨香子、これ好きなのよね」
まきばのモーモーミルク珈琲。
ちょっと男には恥ずかしいけど、相原君も残業で疲れた時こっそり飲む、甘くてこってりのやつだ。
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