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僕はこの部屋を脱出します。 貴方のおかげです、ありがとうございました。 この不自由な王子に、もっと広い世界を見せてあげたい。 本来神(私)は人間という存在には平等で、人間や星に暮らす生き物にのみ与えられる感情を持つことはない。 けれど、生まれたコトが罪だが。 王子自体には、何の罪もない。 小さな箱の中で空気のみを与えられ続け、ヒトから人間として与えられるコトは、何もなかった王子。 けれどほんのひと握りの憐れみによって、王子は生き延びる術を手に入れた。 それは私の力はきっかけであり、王子の生きる力そのもの。 もう、私の力はいらない。 昼間に最低限の世話をする女性がいるのだが、王子は夜の間だけ教えた事を素直に覚え、自由への蜘蛛の糸を見事掴んだのである。 私が王子の元に来たのは私も含めて、神たちの階級アップのため。 私たち神を創った者は、見えない存在(全)。 全は、定期のような不定期(気まぐれ)に試練を与え、見事試練に成功した神(モノ)にのみ、階級が上がる。 今回は【愛】がテーマ。 沢山ある覚醒された星の中から、愛を1つ以上見つけること。 その愛の器や具合により、階級が上がるという。 私以外の者も、自分なりに検索をし続け、残業すら厭わず。 神はまずは、星について調べ上げ、知るところから始まるのは、毎回のこと。 故に、この試練の制限時間は、人間でいうところの一世紀から半世紀ほど与えられた。 (大体の平均時間は同じ。誤差はあまり問わないが、目に見えての逸脱は減点対象になる) 人間や生き物の生まれてから転生まで、全てが宙(そら)という私たちの世界に記録されていて、原因等は変化するものの、生命(いのち)の始まりと帰還(かえる)時期は変化がない。 私は自分なりに調べあげ、王子の元に降り立つ。 白と灰色の小さな部屋に王子は閉じ込められ、幼子ではあるが、平均的には言葉も話せる齢。ただ、ぼんやりと灰色のシミが滲む天井を座ったまま、見つめていた。 髪はボサボサだが、洋服は想像よりも汚れていない。 定期的に、交換されているのだろう。 私は早速、寝床の近くに有る仏像に力を使い王子に話しかける。 (わたしは肉体がないので、人形や像を媒体にして力を使うことはできる)
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