第一部:春夏の流れ、だらだらと、滔々と、ころころと巡る月日。

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〔チョコレートのミルフィーユブロック〕なるデザートを食べる木葉刑事は、紅茶で口を空けると。 「見舞いに来た飯田さんの話しですと、一課長が新しく成ったみたいですね」 「えぇ。 管理官だった木田さんが、新たに一課長へ昇進して。 小山内理事官、八重瀬理事官を左右の腕にして。 新たに、郷田・・笹井・・今和泉って云う三人が、新たに管理官に成ったわ」 「ナルホド…」 捜査一課長は、殺人・傷害・強姦・暴行・強盗・誘拐など、強行犯係りが対する捜査一課を束ねる(おさ)だ。 都内の事件で、警視庁捜査一課が関わる捜査本部の全責任者で在り、捜査本部を作るかどうかを決める司令官の様な者。 前任者の色眼鏡をした一課長は、点数稼ぎの場が他に無く、仮処置の形で一課長の席に座ったが。 本来は、経験と実績が在って然るべきな者が其処へ座らなければならないハズだ。 三角のチョコレートの中が、サックサクのミルフィーユと云うデザートに、木葉刑事は満足を得ながら。 「木田さんは、本当に適任者ですよ。 本当ならば、最初からあの方が居るべきッスね」 と。 同意見ながら、サクサク云うミルフィーユの具合を窺っていた里谷刑事は、それが美味しそうに見えて来て。 「ね、私の“季節のマカロン”とそれ一個、交換してよ」 「はい」 シェアまでし始めた二人だが。 さくらんぼのムースジェラートを食べきる里谷刑事は、外を眺めながら。 「でもね。 笹井って人は、管理官にはゼッタイ不向きよ」 「どおしてッスか? あの人は女性を強く起用する事で有名な、元4係りの班長でしたよ」 「あのねぇ、木葉さん。 ‘女性を起用、女性を起用’って、最近は良く云うけど。 世の中の半分は男だし、経験や能力を見抜かずして女性を起用するのは、只の女好きよ」 「はぁ…」 「大体、あの笹井って人の班は女性だらけだったけど。 解決する事件に偏りが在るって、噂が出てるわよ」 「ほぉ。 あんまり他の班の事を知らないんで、それは初耳ッス」 こうゆう処は、正に女性らしい里谷刑事。 噂や現実を織り交ぜ、長話に興じる。 ま、この後は木葉刑事を新宿舎マンションに送って、そのまま自分も隣の女性独身寮に帰りゆっくり寝る予定だから、気を抜いて居るのだろう。 処が、それは一通のメールにて、脆くも潰れる事に成ってしまうのだった…。
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