第一部:春夏の流れ、だらだらと、滔々と、ころころと巡る月日。

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一方、新しく入って来た刑事は、如月刑事、市村刑事、織田刑事、八橋刑事の四人。 この四人は、何れも木葉・飯田の両刑事と仕事が出来るならと、自身から申告して志願入りした四人と云う。 これを聴いて木葉刑事が。 「確かに、全員が自分と捜査経験が有りますね」 ドライカレーの旨さに喜ぶ里谷刑事が、 「‘手柄’の絡み?」 「いえ。 四人のどなたとも、物悲しい事件だったり。 被害者が多数居た事件ばっかりでした…」 この返しに、頷き返した里谷刑事。 「ナルホド。 篠田班長も、飯田さんも、同じ事を言ってたわ」 「・・・は?」 「“木葉のお陰で、漸く‘らしい’班が出来上がった”ってさ」 「はぁ?」 トマト煮込みのチキンを食べる里谷刑事は、寧ろ彼より意味を理解する。 猪瀬を始めとした刑事達は、もう‘刑事’としての信念と云うか、人間性の根っ子が傷んでいたが。 新しく入って来た刑事達は、確かに‘刑事らしい’刑事で在る。 例えば、市村刑事と云う人物は、まるで年齢を重ねたイケメン俳優の様な、スタイリッシュでダンディ俳優と云うべき容姿。 ネクタイやらシャツやらがとても派手やかで個性的な、38歳の中年男性。 フェミニストで仕草を決める癖が在る反面、人の話を聴く広さは大人びて居る。 また、如月刑事は、短い頭髪の話し好きな40歳。 噂好きでも在り、‘情報屋’とか‘ワイドショー’と噂されるも。 聞き込みの速さや深さは、たった一回の仕事でも解る腕前で在る。 織田刑事は、子供が二人居る女性刑事。 長い髪を白髪を隠さず縛るだけで、40半ばと云うより50過ぎに見えるオバサンだ。 然し、元は所轄の生活安全課で少年犯罪や薬物を追っていただけ在り。 人を視て嘘を見抜く眼は持ち合わせて居ると、飯田刑事が云う。 そして、体重150キロを超える巨漢の八橋刑事は、木葉刑事と年齢に差が無い33歳の新任刑事。 中途採用にて刑事に成って、サイバー対策課が欲しがった人材らしいが。 所轄の刑事をして居た時、木葉刑事と組んで捜査をした。 その経緯から再編を聞き付け、志願入りしたらしい。 だが、問題も有る。 デザートに手を付ける里谷刑事は、 「ウチの班も様変わりしたけど。 管理も様変わりしたわ」 と。
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