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逢桜の名前にはおじいちゃんの思いも込められています。
どうぞ自分の足で立てる女性になって下さい。逢桜の人生を謳歌して下さい。
最愛の人を見付けて下さい。
逢桜の未来が輝かしいものでありますように、そう願っています。
絹江 』
逢桜は校庭の老桜を確認するように眺める。
「意味はね。桜の季節に産まれた私と逢えた喜びを忘れないように、なんだって」
「ふ~ん、私の名前と一緒じゃん。何かあんまり意味ないよね。
で、何で泣いてたの?」
「えっと… 良く分かんないや」
取り繕うように逢桜が笑った時、老桜の方から駆けてくる男子生徒がいた。
「ちょっと良いかな。
今日転校してきて迷ったんだ。
サッカー部の部室って何処かな?」
その少しはにかんだような表情の男子生徒の肩に、桜の花弁が一枚乗っている事に逢桜は気が付いた。
「サッカー部の部室なら、彼処に見える体育館の裏だよ」
「ありがとう。助かったよ。
じゃ、また」
クルリと背を向けた男子生徒の肩から桜の花弁が舞い上がる。
それは風に乗り夕陽で薄花色に染まった空へと消えていった。
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