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校内で二人きりになれる場所なんて多くない。……授業中を除けば。
授業の始まりを告げる鐘を聞きながら、僕と潤平はあまり使われることのない東階段脇のトイレに身を隠していた。狭い個室で、二人で向かい合う。
「へへ、シンと一緒にさぼりー」
「ノート借りなきゃ……」
「試験前そのノート写させてね」
「毎回毎回……ちゃんと授業出なよ。潤平はほんとは頭いいんだから。留年したりしたらどうするの」
潤平は、中学入学当時は僕と同じくらいの成績だったはずだ。それが中学二年になる頃には、まったく勉強もせず、試験中まで居眠りしていた雪野に近くなっていた。
「留年は嫌だなぁ。シンと違う学年になったら嫌だ」
「だったら」
「でも俺が頭がいいって言うのは間違い。頭殴られ過ぎた所為かな? あ、首絞められ過ぎて酸素行き届いてない? 記憶力かなり落ちてんもん。俺のピーク小学生で終わった」
ヘラヘラ笑う潤平に、胸が苦しくなる。
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