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   ◇  それから数日後、僕は放課後の教室で一人、潤平を待っていた。潤平は午後の授業を雪野と一緒にサボることはよくあったが、授業が終わると戻ってきて、僕と一緒に帰っていた。バイトに直接行くとかで一緒に帰れない日は伝えてくれたし。  授業が終わって一時間。すでに教室には誰もいない。部活をしている生徒はもちろん、そうではない生徒も、暖房を消されてしまった教室は寒くて、皆早々に場所を移していた。  冷たい椅子に座って、かじかむ手で数学の宿題を解いていた。時折携帯に目を走らせるけど、着信はない。何度目かの溜息を吐いた。  不意にドアが開く音がして、僕はきっと潤平だと期待を込めて顔を上げた。  痛んだ金髪。整った、表情がなければ怜悧にも見える顔。 「シン」  一言名前を呼ばれればわかる。僕を呼ぶその声に、温かさがないから。姿は同じでもまったく違う。  教室に現れたのは雪野だった。
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