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  「僕が、潤平を殺せるわけ、ないから。それ、潤平もわかっちゃうから、痛いだけで、死にそうとは、思えなくて……」 「結局怪我させただけで挿れてもらえなかったわけね。あー、お前が潤平に挿れればいいんじゃん? あいつ俺とヤリ過ぎでガバガバだから、できんじゃね?」  言ってから自分があまりな物言いをしたことに気がついたのか、珍しく「今のなし。ごめん」と雪野が謝った。  潤平に首を絞めてと言われても、震える手で首に添えるだけで、力なんて入れられなかった。僕は泣いて、「嫌だ」「できない」と繰り返して、潤平が悲しそうに「ごめん」と微笑んだのを覚えてる。  その「ごめん」と、声音は似ていた。 「ま、お前が俺みたいなこと潤平にできるわけないよな。できない方がいいと思うし」 「どういうこと?」 「お前はお前の立ち位置でいろっての。潤平と付き合ってんのが、俺みたいな奴じゃなくてお前だってのは、お前みたいのが潤平にとって必要だからだろ」
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