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 それから数週間後、潤平は退院した。入院中、僕は毎日お見舞いに行っていた。潤平が怪我をして入院したことは今までにもあったけど、こんなに長く入院するのは初めてのことだった。潤平の両親も、さすがに姿を見せた。心配しているというよりは、厄介事を起こしたと潤平を責めていたけど。  僕にとってはすごく安心できる期間だった。入院中は雪野も、他の誰も、潤平を傷つけることはできないから。  潤平は「自殺」はしない。いや、しなくなった。雪野とセックスする前は、よく自傷行為をしていた。それは潤平にとっての自慰行為だった。でもそれでは死ねないことを、潤平は自覚してきてしまって、自傷行為が快楽に結びつかなくなったらしい。だから今は雪野と離れていれば、潤平が怪我をすることはなかった。  二人で過ごす病室での時間は穏やかだった。潤平と、久しぶりにゆっくりと話した。人目を盗んでキスをした。やっぱり唇が触れてから僕に伺いを立てる潤平が可笑しくて、笑った。雪野にも何度か見られて、「バカップル」と呆れられた。
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