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「こころ、やめろよ」
見上げれば、潤平の首筋に僕の手の痕。
「はは」
自然と笑みが漏れる。嬉しくて嬉しくて。潤平のものを咥えた。
「こころ、意味のないものなんかじゃ、なかっただろ? お前らのあんな優しいキスが、意味のないものなんて、そんなわけないだろ」
潤平が少し腰を動かす。喉を潤平のが突く。
「んぐっ、」
僕はふと気がついて、顔を上げて雪野を見た。
「こころ? 気がついたか? なあ、今日のはほんと、いろいろ精神的にお前疲れて──」
「ね、雪野、潤平の首絞めて? 慣らさなくても僕が痛いの我慢すれば、潤平のを挿れられるよね」
こころ、と僕を呼ぶ声が弱々しくなっていく。初めて見た雪野の涙。それだけがやっと満たされた僕の心に落ちて、一点の染みを作る。
染み、だ。僕の心に必要のない、染み。だけど恐らく、僕を繋ぎ止めるもの。
「染み」 終
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