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「……おい。そこから飛び降りたらマジで死ぬぞ」
潤平はバレたか、とこちらを見て微笑む。
──なあ。なんでこいつはこんななんだよ。俺よりいい奴だよ、こいつもこころも。なんで変な性癖なんか持たせんだよ。潤平もこころも、それで泣くんじゃん。こころは弱虫なくせに、俺に噛み付いてくんじゃん。潤平、痛いの嫌いじゃん。なのになんでなんだよ。
誰にぶつけようもない怒りが、腹のそこでぐるぐる渦巻く。
「シンが泣くから、しないよ」
知ってるよ。知ってる。
潤平が我慢してるものを。こころが我慢してるものを。
「雪野も泣くだろ?」
「泣かねえよ。どうしようもねえなって笑ってやる」
「いやー、絶対雪野泣くね。何気に俺のこと大好きだからね」
「よく勘違いできんな」
「えー、やっぱ勘違いー? あ、つーかさ、最近容赦なさ過ぎだから! 俺痛いのが好きなわけじゃないからさ、痛くなく適度にお願いしゃす!」
「お前が方法考えろや!」
今日も二人で、一緒に帰るんだろう。この天気なら、きっと綺麗な、夕焼けの中を。
笑って、恥ずかしがりながら手を繋いで、家の前で軽くキスして。
ああ、俺は好きだった。
二人の作る、景色が。
愛しかった。
終
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