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父と母が離婚したのは、そんな高校二年も終わる二月の終わりだった。やっとか、という呆れた思いが真っ先に浮かんだ。家に寄り付かない二人が、よくも何年も籍を入れたままにしていたものだ。潤平も同じことを思ったらしく、しかし隠しもせずにへらへら笑って「やっと二人とも大人になったんだねー」などと言って、父にも母にも睨みつけられていた。
意外だったのは、父と母が俺たちを別々に引き取ろうと考えていたことだった。そして、潤平がそれに強く賛同したことも。
金さえ貰えれば、俺は潤平と二人で暮らしていくのだと思っていた。これまでと変わらず。しかし、変わってしまった二人を見ていて気がつく。俺は潤平にとってもこころにとってもいてもいなくてもいい人間になっている。無理に潤平とともにいようとする必要はないのだと。
母がこちらに残り、父がマンションを出て行くことになったと言われた。それを聞き、俺は迷わず父に引き取られることを選んだ。当たり前だ。潤平とこころを引き離すわけにはいかない。
マンションを出るとき、潤平はいつものようにへらへら笑って俺と父を玄関から見送った。
「今までありがとね、雪野。戻ってきちゃ駄目だよ」
そう言ってドアを閉められたことを覚えている。
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